このたびの新体制のスタートに当たり、選出された役員一同、学会をよりいっそう活性化するために活動してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本社会薬学会は、昨年、設立30周年を迎えました。当時,東京・目黒みやこ荘で開催された社会薬学研究会設立総会・シンポジウムは、薬学のみならず、医学、倫理学、法学、社会学、経済学など学際的な立場で「薬の社会性」を問う新たな学問の誕生を意味するものでありました。当時、化学偏重の薬学教育が行われている中、私は「薬学とは何か、その意義と使命とは何か」という問いに対して明確に答えられる大学教員でありたいと考え参加していましたが、会場の熱気に、社会薬学の発展は、日本の薬学を変えるかもしれないと胸を躍らせていました。
実際に、最近の 6年制薬学教育の実施により、社会薬学分野は、薬学教育モデル・コアカリキュラム「薬学と社会」に明示され、薬学共用試験CBT、さらには薬剤師国家試験の「法規・制度・倫理」に新たに組み入れられ、必修科目として位置づけられ、これに伴い、少しずつ関連する講座や研究室が設置されました。
一方、 6年制薬学教育による制度改革は、学生、教員そして現場の指導者にとってそれぞれに多くの課題を抱えています。医療制度の見直し、チーム医療の推進が図られる中、これらの課題を克服するため、薬剤師の役割に対して、新たに求められるものは何か、新しい領域の学問に対しても積極的に勉強会や講演会を企画・開催し情報を共有してまいりたいと思います。さらに、地域や大学を越え、職種を越え、そして年代を越えて解決策を講じることができる学会をめざしていきたいと願っています。
薬は元来社会的なものであることから、社会薬学の方向性や研究テーマは多岐にわたっています。本学会が目指す研究活動とは、学問のためのテーマを追うものではなく、社会薬学的実践や活動を通じて「人間の生命と健康の維持,発展に寄与」するものであり、医療人としての高い倫理観を土台としたものでなければならないと考えます。さらに,我々の学問は市民生活と離れて存在してはならないという考えのもと、地域社会においても貢献できる学会のあり方を模索してまいります。
今後とも本学会の発展に向けて皆様のご協力、ご支援をいただきますようお願い申し上げます。
平成24年6月
日本社会薬学会会長
宮本 法子