北海道薬科大学社会薬学系
薬事管理学分野 教授 早瀨幸俊
日本社会薬学会の会長をこのたび務めさせていただくことになりましたので、所信を述べたいと思います。
はじめに、日本社会薬学会を取り巻くこれまでの環境について私見をまじえて述べてみたいと思います。これまで長い間、我が国の薬学教育は「くすり」という物質中心の教育を行い、薬学教育に本来必要であった臨床教育をほとんど行って参りませんでした。このため薬学の社会適応としての学問・研究分野である「社会薬学」は、我が国の薬学教育の中ではあまり重要な学問領域として認識されることはなく、その結果として社会薬学分野の研究室(社会薬学研究室や薬事管理学研究室など)を設置する薬科大学が少ないことは皆様も良くご存知の事実であります。また、臨床教育がほとんど行われてこなかった原因としましては、我が国では医薬分業が長い間ほとんど実施されなかったことが挙げられます。
しかし近年、我が国でも医薬分業は確実に進展し、分業率が増加するに伴い医療人としての薬剤師の資質を向上することが求められ、これを解決すべく薬学教育は2006年度から6年制になりました。つまり、6年制薬学教育は、現場で十分に評価される薬剤師を育成することを目的とするため6年間の薬学教育を新たに構築しなければならないということを意味しています。この新たな薬学教育の構築のためには、「薬学の社会適応としての学問・研究分野である社会薬学」を薬学生に教授することが大変に重要かつ必要であり、社会薬学分野を担当する多くの教員や研究室を確保すること無しに真の薬学教育は成立し得ないと考えております。しかし、現状を見ますと6年制薬学教育の実施に伴って社会薬学分野関連の研究室を設置する大学は増加して参りましたがまだまだ少なく、また社会薬学分野を担当できる教員の数も大変に少ない状態にあると思います。社会が求める医療人としての資質を持った薬剤師養成のための6年制薬学教育を真に完結させるためには各薬科大学において社会薬学分野の教員と研究室の確保が急務であることは論を俟たない事実であると思います。
一方、すでに病院薬剤師を対象に、がん専門薬剤師を始めとする種々の専門薬剤師認定制度がありますが、いずれも学会発表と学術論文が必要とされています。また近年制度化され、薬局薬剤師も対象になっている緩和薬物療法認定薬剤師の認定には学会発表が必要事項になっております。さらに、2008年4月に示された保険薬局に対する「基準調剤加算の施設基準」の中に、「当該保険薬局の保険薬剤師に対して、薬学等に関する団体・大学等による研修認定の取得、医学薬学等に関する学会への定期的な参加・発表、学術論文の投稿等を行わせていることが望ましい。」とのことが謳われ、保険薬局の薬剤師にも日々の業務を通して学術活動をすることが求められて参りました。このように、薬剤師としての資質の維持・向上のために学会への定期的な参加・発表、学術論文の投稿等を恒常的に行うことが必要とされる社会を我々は既に迎えております。
そのため私は、日本社会薬学会を社会薬学分野担当教員育成の場として、また時代の要請に十分に応えられるような薬剤師育成の場としてさらに活用していただけるようにしていきたいと思っております。
前会長の白神誠先生(日本大学薬学部教授)のご努力により、日本学術会議より日本学術会議協力学術研究団体として承認された当学会は、名実共に真の学会となり2011年9月には創立30周年を迎えることになります。これからも、会員皆様のご協力を頂きながら存在感のある魅力ある日本社会薬学会の構築を目指し、会員数を増やすとともに全国各地に支部が設置できるように努力していきたいと考えておりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
会長 | 早瀨幸俊 | |
副会長 | 川添禎浩 | 学術担当 |
宮本法子 | 庶務担当 | |
幹事 | 秋本義雄 | (常任) |
遠藤浩良 | ||
折井孝男 | ||
片平洌彦 | ||
亀井美和子 | (常任) | |
小嶋慎二 | ||
佐藤嗣道 | (常任) | |
白神 誠 | ||
関野秀人 | ||
寺岡章雄 | (常任) | |
中村雅人 | ||
中村幹雄 | ||
平松和好 | ||
福島紀子 | (常任) | |
福本真理子 | ||
牧野利明 | ||
監事 | 秋葉保次 | |
三溝和男 | ||
事務局長 | 串田一樹 |